2025年の新しいアクセシビリティ:UXにおける考え方の変化と、組織が今できること

By
Omar Aujani
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2025年の新しいアクセシビリティ:UXにおける考え方の変化と、組織が今できること

アクセシブルなデザインと聞いて、何を思い浮かべますか?

多くの人が、スクリーンリーダーや車椅子用のスロープ、Webサイトが満たすべきWCAGガイドラインなどをイメージするかもしれません。これらは従来のアクセシビリティを正しく表していますが、その定義は今、大きく変わりつつあります。

今日のアクセシビリティは、永続的な障害を持つ人だけでなく、「骨折して片手が使えない」「騒がしい電車の中で動画を見たい」「加齢で視力が落ちてきた」といった、誰もが直面する可能性のある一時的な不便や状況的な制約も対象とします。

もはやアクセシビリティは、開発の最後で確認する「チェックリスト」ではありません。それは、柔軟で適応性のある体験を通じて、あらゆるユーザーを力づける倫理的かつユーザー中心の設計そのものなのです。

私たちプロダクトデザインチームも、日々の業務でこの変化を肌で感じています。

この記事では、最近のアクセシビリティの考え方がどのように変化しているのか、製品デザイナーの視点で解説し、あなたの組織が新しい定義を取り入れる3つのポイントをご紹介します。

アクセシビリティの原点

アクセシビリティの起源は数十年前にさかのぼり、もともとは物理的な環境や永続的な障害への配慮が中心でした(例:車椅子用のスロープや点字標識など)。
その後、デジタル技術の普及に伴い、Web Content Accessibility Guidelines(WCAG)などの基準が登場し、デジタルアクセシビリティの時代へと移行しました。

しかし初期のWCAGの導入は、多くの場合「本質的な包摂」ではなく、「形式的な遵守」に重点が置かれていました。開発の最後に“チェック項目”として確認されるだけの存在だったのです。

現在では、こうした認識が急速に変わりつつあります。

アクセシビリティの現在

1. もはや「障害」への配慮だけにとどまらない

こんにちのアクセシビリティには、以下のような要素も含まれています:

  • 一時的な不自由:怪我や回復期間中のように、一時的にスマホを片手で操作しなければならない状況など

  • 状況的な制限:騒がしい場所で音声コンテンツが聞き取りにくい、直射日光で画面が見えづらい、など

  • 加齢による変化:加齢に伴う視力や聴力の変化など

アクセシビリティは決して「一部の人のもつ障害」のことではなく、すべての人に関係する「より良い体験づくり」を意味するようになってきました。

2. 固定的なガイドラインから、「個別最適化」「ユーザー主導」へ

最新のベストプラクティスでは、「ユーザー自身が使いやすさを調整できる」といった柔軟性が重視されています。たとえばコントラストや文字サイズ、操作方法を変更できるようなインターフェース設計がその一例です。

近年重要性を増しているのは、「すべての人に同じものを提供する」ことではなく、「ユーザー自身が必要に応じて調整できる」体験を提供することなのです。

3. アクセシビリティは今、UX(ユーザー体験)の考え方の中心にある

アクセシビリティは、もはや技術的・法的要件ではなく、デザインにおける倫理そのものです。
多様なユーザーを設計プロセスに積極的に取り入れる動きが進んでおり、「インクルーシブデザイン」や「デザインジャスティス」といった考え方がUXの中心に位置づけられつつあります。

今、組織が取るべき3つのアクション

こうした変化を理解するだけでは不十分です。では実際に、組織として今何をすべきなのか?
アクセシビリティの考え方を簡単に取り入れるための、3つのステップをみていきましょう。

ステップ1:ユーザーの生活背景を深く理解する

ユーザーリサーチを通じて、実際の利用シーンや制限を深く掘り下げましょう。特に、一時的・状況的・加齢的な側面に注目することで、見落とされがちな障壁や新たなデザインの機会を発見できます。観察調査やインタビュー、文脈的調査などが有効です。

ステップ2:柔軟でユーザー主導の体験を提供する

「こう設計すればOK」という一律な基準から脱却し、ユーザー自身が体験を調整できる仕組みを作りましょう。
たとえば、コントラストや文字サイズの調整、アニメーションの有無、操作モードの切り替えなど。柔軟性を備えた設計は、幅広いニーズに対応します。

ステップ3:自動化と人間の判断を両立する

FigmaなどのAIツールやアクセシビリティ自動チェックツールは非常に有用ですが、それだけに依存するのは危険です。
「人間の目と感性」を取り入れた設計プロセスが不可欠です。
定期的なアクセシビリティ監査、包括的なデザイン研修、多様なユーザーとの共創ワークショップなどを、組織文化として取り入れることが推奨されます。

アクセシビリティの未来

今後、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)、環境型テクノロジーなどの普及によって、新しいアクセシビリティの課題が生まれるでしょう。
さらに、世界的な高齢化の進行は、アクセシビリティを「選択」ではなく「社会的責任」として位置づけ直すきっかけになるはずです。

変化するアクセシビリティの定義に今から向き合うことで、よりユーザーに親しまれる、包括的な製品設計が可能になります。

今やアクセシビリティは、すべての人にとって必要不可欠

今やアクセシビリティはチェックリストを埋めるだけの作業ではなくなりました。

一人ひとりの多様なニーズに応える、「パーソナルで倫理的な体験設計」を意味するまでに進化しています。

あなたのプロダクトは、一時的な不便を抱えるユーザーや、日々変化する状況下で利用するユーザーに寄り添えているでしょうか?
この新しい考え方を取り入れることは、単なるコンプライアンス遵守に留まらず、より革新的で、より広いユーザーに受け入れられるプロダクトを生み出すための鍵となります。

アクセシビリティを競争優位性へと変え、誰もが使えるプロダクトを創造するお手伝いをさせていただけませんか。

具体的なご相談がある方、製品デザインの設計についてお悩みの方は、Tokyo Techiesまでぜひお気軽にお問い合わせください。

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