本シリーズのパート1では、中小企業向けに設計されたAIチャットボット「Kotae」のユーザーインタラクションに関する初期調査について共有しました。ユーザーインタビューとユーザビリティテストを通じて、特に初期オンボーディングとダッシュボードの使いやすさにおいて、エクスペリエンスが期待を下回る主要な領域を明らかにしました。
今回の記事では、これらの洞察をいかに具体的な設計ソリューションへ転換したか、事例を交えてご紹介します。問い合わせ対応をスムーズにし、操作の直感性を高め、ユーザーのニーズを満たすチャットボット体験をいかに実現したか。その開発過程を通じて、中小企業が直面するチャットボット導入・運用課題の解決ヒントとなれば幸いです。
課題を強力なソリューションへ!
調査データは、ユーザーがどこで苦労しているかを明確に示していました。
特定された主な課題と、それらを克服するために実装した設計上の工夫について詳しく見ご紹介します!
決済の壁:取引前の信頼構築
- 課題: 多くのユーザーがStripeの決済画面に遭遇するとすぐにサインアッププロセスを中断しました。これは、Kotaeの主要な機能を体験する前のステップです。
テスト中にユーザーを観察すると、フラストレーションの兆候が見られました。あるユーザーが「支払い情報を入力する前に試してみたい」と明言しました。
このフィードバックは、SaaS提供側が支払いを要求する前にプロダクトの価値を示し、ユーザーからの信頼を得る必要があるということがわかりました。
- 私たちのソリューション: この壁を取り除くことで、ユーザーがKotaeの機能を探索し、その価値への信頼を築き、後でより喜んでサブスクライブするようになるのではないかと仮説を立てました。そこで、利用開始前のフロー(オンボーディング)から支払い登録ステップを削除することを決めました。
オンボーディングの壁:シームレスな初回体験の優先
- 課題: ユーザーはオンボーディングプロセスに時間がかかり、直感的ではないと感じていました。支払い情報を入力する前にKotaeを試したいというユーザーの希望から、できるだけ早く製品にアクセスできるようにすることで、ポジティブな第一印象を与えることができると仮説を立てました。
- 私たちのソリューション: 私たちは、ユーザーが製品を早く試したいという思いを邪魔しない、スムーズなオンボーディング体験の構築にこだわりました。
保険、税務ソフトウェア、AIなど、さまざまな業界で成功したオンボーディングフローを参考にし、ユーザー中心のアプローチを採用していきました。
欧米のUXデザインのトレンドは、ユーザーを素早くサブスクリプションに誘導することを重視していますが、Kotaeは日本を含むよりグローバルなユーザーに対応する必要があり、オンボーディングフローを再考しました。
現在、ユーザーはアカウントを作成する前に、すぐにチャットボットを学習させたりカスタマイズしたりできます。そしてログインすると、明確なステップバイステップのチュートリアルが表示され、残りの重要なセットアップタスクを説明し、利用までの時間を短縮しました。
オンボーディングプロセスを開始すると、チャットボットを設置するウェブサイトの入力し、すぐに学習が開始できます。これによりアカウントを作成する前にKotaeの設置イメージを持てるようになっています。
最初のログイン時に、操作を一つづつ紹介するメッセージ(ツールチップチュートリアル)が表示されます。ユーザーが主要な設定手順を理解し、その過程でKotaeの仕組みを理解するのに役立ちます。
視覚的階層の改善:明確さと直感性の向上
- 課題: いくつかのパーツで視覚的な整理が不十分であり、ユーザビリティを妨げていました。
たとえばチャット履歴は、1つの長い連続したページとして表示されていました。ヘッダーでは会話の開始と終了を表示していましたが、個々のメッセージがこれらのヘッダーの下にネストされているため、問い合わせの流れを追うのが困難でした。
同様に設定ページでは、初期設定に必要だという理由から外観、チャットボットの学習、外部アプリとの接続という3つの異なるセクションが、1つの画面にグループ化されていました。
ただ、一度設定が完了すると、これらの再設定のためにこのページに戻るのは直感的ではないとユーザーは感じていました。
以前のチャット履歴ページは、すべてのチャットセッションを縦長に表示しており、視覚的な階層と明確さを改善する必要がありました。
- 私たちのソリューション: ここではより直感的な視覚パターンを採用しました。
チャット履歴では、利用者が多く馴染みのある「Messangerアプリ」を参考にしたUIにし、ユーザーの質問とボットの回答を見やすく区別し、そして会話の時系列を確認しやすくしました。
設定ページでは、3つの初期設定セクションはすべて重要でしたが、概念的に関係がわかりづらいため、初期設定フェーズ後に分離する必要があると考えました。
上記のような点を、ユーザーの体験として自然な流れになるよう再編成しました。
再設計されたチャット履歴は、ユーザーのイメージにより近い、標準的なチャットUIを採用しています。
デザインリニューアルによるポジティブな影響の予想
これらのデザインを実装することで、ユーザーエクスペリエンスにおけるいくつかの重要な改善が期待されました。
- 事前の支払い障壁を取り除くことで、初期サインアップを完了し、Kotaeの機能を探索し始めるユーザーの数が大幅に増加すると予想
- ミニマムながらも整理されたオンボーディングプロセスは、新規ユーザーがチャットボットの主要な価値を体験するまでの時間を短縮し、エンゲージメントの向上とチャーン率の低下につながることを目指した
- 視覚的階層の改善は、プラットフォーム全体のユーザビリティと満足度を高め、ユーザーがチャットボットを管理し、インタラクションを理解しやすくすることを目指した
本ブログシリーズのパート3では、デザインの検証と、新デザインが旧デザインと比較しどのような違いをもたらしたか、実際のデータとともにご紹介します。乞うご期待ください!