
要約
- エンタープライズソフトウェアの多くは、実際に使うユーザーを助けるためではなく、購入担当者に良い印象を与えるために作られている
- 設計の失敗は、コストのかかるミス、非公式な回避策、そして疲弊した従業員を生み出す
- 解決策は、多くの製品チームが思うより単純だ、しかもそれは、画面を一枚デザインする前から始まる
- 仮想ユーザー、タスクマッピング、ユーザビリティテストといったシンプルな手法が、限られた予算でもプロダクトを変えられる
仕事のツールが理解できなくて、自分を責めた経験はありますか?
画面を見つめ、意味のわからないメニューをクリックし続けながら、「自分が何か見落としているんだろうか」と思う。でも、そうではありません。使いにくいソフトウェアは、ほとんどの場合ユーザーのせいではありません、設計の問題です。そしてその設計の問題が、企業に何百万ドルもの損失をもたらしています。文字通りの意味で。
2020年、シティグループの下請け業者は、銀行のエンタープライズソフトウェアを使って780万ドルの定期利息を送金するという、ごく普通の業務を任されました。その後に起きたことは、設計の失敗がいかに深刻な結果を招くかを示す教訓となりました。
インターフェースは情報が詰め込まれ、わかりにくいものでした、不明瞭なテキストフィールド、役に立つフィードバックもなく、自分が何をしようとしているのか確認する方法も見当たらない。操作中に担当者はミスを犯しました。780万ドルを送金するはずが、ローン残高の全額、9億ドルを振り込んでしまったのです。

9億ドル近いミスは極端な例ですが、日常で起きる同様の問題も十分に深刻です。たとえば:
- 直射日光の下でコントラストが悪く読みにくい配送アプリを、目を細めながら操作する物流ドライバー
- 公式システムが重くて複雑すぎるため、個人のアプリで仕事の詳細をやり取りしている従業員
- 未承認のツールを使って業務を進めるチーム、会社をセキュリティリスクにさらしながら
これらは単なるIT部門の悩みではありません。より深い問題のサインです。使う人のことを、最初から本当の意味で考えて設計されていないソフトウェアの問題です。
こうした設計の失敗は、ほぼ例外なく同じ根本原因に行き着きます。それはユーザーへの共感の欠如です。プロダクトチームがユーザーの素性、働く環境、日々直面していることを深く理解していなければ、そのニーズに本当に合ったソフトウェアを作ることは、ほぼ不可能です。
デザインにおける共感とは、ユーザーのニーズ・感情・目標を能動的かつ意図的に理解することで、プロダクトチームがワークフローの障壁を取り除けるようにする実践です。
「買う人」と「使う人」のズレ
では、エンタープライズソフトウェアはなぜあれほど使いにくいのか。答えは一つの核心的な問題に行き着きます:ソフトウェアを買う人と、実際に使わなければならない人が、ほとんどの場合、別人だということです。
一般的なコンシューマーアプリでは、買う人と使う人は同一人物です。アプリにストレスを感じたら、削除すればいい。この即時フィードバックのループが、コンシューマー製品を洗練されたユーザーフレンドリーなものにし続けています。
しかしビジネスの世界では、話がまったく違います。従業員はツールを選べません、与えられたものを使うしかない。そして代理店がBtoBプラットフォームを構築するときの最大のミッションは、購入担当者、多くの場合、CEOや調達担当者、あるいは技術要件のチェックリストをこなす担当者に良い印象を与えることです。

このダイナミクスは、予測可能な結果を生み出します:機能の肥大化です。
- 核心的な機能が、二次的なオプションの層の下に埋もれていく
- インターフェースは雑然として、圧倒的な情報量になる
- ソフトウェアの機能の80%はほとんど、あるいはまったく使われないというデータがあります、それでも機能は残り、スペースを取り、混乱を招き続ける
もう一つの副作用として、実際に使う人間のことはあまり考えずに、求められる技術を搭載することを中心にプロダクトが設計されてしまうことがあります。優れたプロダクトは早い段階でバランスを取ります、本当に重要な機能を絞り込み、それらを最も多くの時間を使う人にとってできる限り直感的に使えるよう設計する。それが出発点です。
高くつく応急処置:トレーニングとサポート
ソフトウェアが使いにくすぎるとき、多くの組織は同じ解決策に手を伸ばします:トレーニングです。
- 必須のオンボーディング研修
- 分厚いマニュアル
- 日常的な基本作業をこなすためだけに費やされる、何時間ものウォークスルー
しかし現実はこうです:日常業務をこなすのに何時間ものトレーニングが必要なら、そのソフトウェアはすでに失敗しています。トレーニングは設計の問題に貼られた応急処置であり、しかも高くつく処置です。
プロダクトが直感的であればあるほど、より早く使い始められ、操作方法を教えるための時間とコストが減ります。
しかし優れたデザインのメリットは、オンボーディングの短縮だけではありません。行動心理学に「認知的容易さ(コグニティブ・イーズ)」という概念があります。使うのに必要な精神的労力が少ないほど、自然と気持ちよく感じられる、それだけのことです。ミスは減り、自信が持てるようになり、仕事そのものが楽しくなります。
Forresterなどの調査会社のリサーチは一貫して、エンタープライズUXへの投資が生産性を向上させるだけでなく、従業員のエンゲージメントと仕事満足度にも直結することを示しています。
従業員の立場から考えてみてください。使いにくく、わかりにくいソフトウェアを1日8時間使い続けることは、非効率なだけではありません。心が折れます。そして、そうした現実を無視してソフトウェアを設計することは、単に「悪い設計」というだけでなく、倫理的な問いを突きつけてきます。
プロダクトチームへの実践的アドバイス
うれしいことに、プロセスに共感を組み込むことは、必ずしも大きなリサーチ予算を必要としません。見落とされがちでありながら、実際に効果的な3つの手法を紹介します。
1. 現実感のあるペルソナ
ペルソナとは、典型的なユーザーのリアルなプロフィールです。どんな人か、どこで働いているか、どんなツールに慣れているか、そして何にストレスを感じているか。
- 必ずしも正式なリサーチプロジェクトは必要ありません
- まず営業チームや主要なステークホルダーと話してみましょう、彼らは誰よりもユーザーをよく知っていることがあります
- オープン・クエスチョンを投げかけてみてください:一日はどんな流れ?これまでどんなツールを使ってきた?何が一番ストレス?
- こうしたペルソナを目に見えるところに置いておき、すべての重要なデザイン判断の場面で参照する、集団思考や勘に頼った判断への、現実的なブレーキとして機能します
2. タスクジャーニーマップ
BtoBにおいて最も有効な問いは、「全体のユーザージャーニーは何か?」ではなく、「この人が毎日繰り返し行う必要があることは何か?」です。
- ユーザーが行う最も重要な日常タスクを特定する
- そのペルソナとして、プロダクトのプロトタイプを使いながらタスクをひとつひとつ実行してみる
- 疲弊しているとき、気が散っているとき、プレッシャーのかかる場面で従業員がつまずきそうな箇所に特に注意を払う
- そういった摩擦ポイントが、再設計の優先箇所になります
3. ユーザビリティテスト
実際の人がプロダクトを使う様子を見ることに、代わりはありません。謙虚にさせられる経験であり、同時にかけがえのない経験です。
- どれだけ丁寧に設計しても、自分では気づかない盲点は必ず存在します
- 実際のユーザーは、あなたには見えない問題を見つけてくれます
- 5〜8人のリアルユーザーによる小規模なテストでも、デザインチームがまったく気づかなかった重大な問題を定期的に発見できます
- リサーチ手法に一つしか投資できないなら、これを選んでくださ
共感はビジネス戦略だ
機能リストやスプリントの締め切りに追われているとき、つい忘れがちなことがあります。あなたのユーザーは、人間だということです。
私たちがデザインの意思決定をするとき、ついつい想定してしまう「完全に合理的で論理的なロボット」ではありません。彼らは:
- 私たち同様、感情的で、バイアスもある
- 自分の専門分野ではエキスパートだけれど、ストレス、疲労、高いプレッシャーの場面ではパフォーマンスが落ちることもある
- 常に近道を探している、あなたのソフトウェアが最も楽な道を提供しなければ、彼らはどこか別の場所にそれを見つける
優れたデザインチームは、すべての段階でそのことを念頭に置いています。あらゆる技術要件の裏に、あらゆるKPIの裏に、あらゆるビジネス目標の裏に、本物のニーズと限界を持つ、リアルな人間がいます。
優れたBtoBデザインは、購入担当者の機能チェックリストをこなすだけでは終わりません。能動的にユーザーを守ります。彼らの限界を尊重します。そして、日々のワークフローをストレスの多い雑務から、直感的に、さらには心地よく感じられるものへと変えていきます。
あなたの会社の社内ツールは、チームの力を引き出していますか?それとも高価なトレーニングと、見えないところでの回避策に頼らせていますか?
その答えが少しでも気になるなら、まず話してみましょう。
BtoBソフトウェアの共感ギャップは、一度に表面化するものではありません。使いにくいインターフェース、増え続けるトレーニングコスト、現場で広がる非公式なツール。それらが少しずつ積み重なっていきます。
しかし、解決できます。明確な課題を一つ選んで、しっかり向き合うことから始めればいい。今動き出したチームは、確実に差をつけていきます。
専門用語は使わず、無理な勧誘もいたしません。貴社のUI/UX課題について、お気軽にお話しください。
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